SOUNDPEATS Air5 Pro+ 実機レビュー【MEMSドライバー搭載 完全ワイヤレスイヤホンの実力】
今回、SOUNDPEATSさんからの提供品になりますが、いつもながらの率直レビューです。
完全ワイヤレスイヤホンの世界は、ANC、ハイレゾ対応、マルチポイントなど主要機能は出揃い「次は何で差別化するのか」が問われています。
そんな中でSOUNDPEATS Air5 Pro+ は革新的なハイブリッドドライバーと、Qualcommの最新オーディオプラットフォームを組み合わせて音質を追求したフラッグシップモデルとなります。
SOUNDPEATS Air5 Pro+の外観
中身はいつも通り、本体とUSB-A to Cケーブル(充電器は別売り)、ユーザーガイド、替えのイヤーピース2種類。
直前でレビューしたClip 1(左上)と2年間くらい使ってきたAir4と比べると…ケースは好みですがAir4より明らかにサイズはアップし、ロゴデザインも凝っています。
ケースを開くと、かなり取り出しやすい形に左右のイヤホンが収まってます。(ブルーの保護テープは下に引いて剥がします)
Air5 Pro+はカラーがブラック×ゴールドの1色展開(記事執筆時点)なのは好みが分かれそうです。イヤホン本体は光沢仕上げで、高級感がありますね。
ここから、本製品の目玉機能というか設計などについて語りますが、しばらく若干(かなり)マニアックな内容となります。ご了承ください。
ハイブリッドドライバー(MEMS&ダイナミック)について
SOUNDPEATS Air5 Pro+の特徴の一つとして「ハイブリッドドライバー」を採用しています。※通常のAir5 Proと最も異なる部分ですね。
- 中高域用:xMEMS社製 ドライバー「Cowell」
- 低域用:10mm 大口径ダイナミックドライバー
中高域用 MEMSドライバー「Cowell」
従来のダイナミックドライバー(DD)やバランスド・アーマチュア(BA)は、物理的な重さによって音が止まるべき瞬間にピタリと止めることは難しいです。
一方xMEMS社製のMEMSドライバー「Cowell」はスピーカーというより半導体部品に近く、可動部が極めて小さくて高精度なので以下のようなメリットを生みます。
- 再生周波数帯が広い(60~100kHz)
- 応答速度が非常に速い(従来の約4倍)
- 物理的歪みがほぼ発生しない(THD:0.05%未満)
MEMSドライバーでは「音を出す」というより信号をそのまま空気振動に変換する感覚に近い再生が可能になり、特に高音域での繊細さやスピード、解像度の高さを発揮します。
さらに、専用Class-Hアンプ(XAA-2000 Aptos Class-H)を用いることで音が立ち上がる瞬間の鋭さや、消え際の余韻の自然さなどが向上しているといいます。
低域用 10mm ダイナミックドライバー
優秀なMEMSドライバーですが「低音を出すための空気移動」は苦手という弱点を持つので、低域用に重厚感と押し出しの強い「ダイナミックドライバー」を採用。
低域用ドライバーには内部にデュアル銅線を使用したPU+PEEK素材のφ10mm複合振動板を採用することで、ドライバーの駆動力は強力。
これらのハイブリッド構造により、いわば「いいとこ取り」の構成を取ることで、数値上のハイスペックと音楽的な聴き心地の良さを両立させているらしいです。
ワイヤレスで高音質実現のため主要コーデック全対応
Air5 Pro+は、Qualcomm S3プラットフォームに属する「QCC3091」チップを搭載し、ハイレゾとSnapdragon Soundのダブル認証を取得。
LDACによるハイレゾ再生と、aptX LosslessによるCD品質のロスレス伝送を両立。次世代のLE Audio (LC3) にも対応し、簡単に言えば現状全部入りの一台です。
QCC3091(Qualcomm S3 Gen 3 Sound Platform)は「プレミアム級の機能をミドルクラスの価格帯で実現する」ことを目的に開発された最新の有力チップ。(対応コーデック:LDAC / aptX Lossless / aptX Adaptive / AAC / SBC / LE Audio(LC3))
ノイズキャンセリング性能「−55dB」
Air5 Pro+は、最大−55dB のAI適応型ANCを搭載。これは業界でも最上位クラスの性能です。そして単純に「無音に近づける」だけでなく、不快な帯域を的確に削るチューニング。
「適応型アクティブノイズキャンセリング」
ANCが強力になるほど問題になりがちな「耳の詰まり感」が出たりします。
Air5 Pro+では装着状態をAIがリアルタイム検知し、周囲の環境音に応じて強度を自動調整する「適応型アクティブノイズキャンセリング」を採用しています。
これにより、長時間のANC使用でも疲れにくい設計となっています。
実際の音や使用感
以上のような能書きはスペック表を見れば分かるわけですが「実際の音」はどうなのかと。
確かに非常に精細で聞きごたえのある音
実際に聞いてみると、純粋なモニターヘッドホンのような音の細かさに加えて、音楽などをしっかり楽しめるようなセッティングで正確さと聞きやすさを両立しています。
低音域から高音域までのバランスも抜群で、ダイナミックドライバーとMEMSドライバーの併用による効果なのか、どの音域も明瞭です。
確かにメーカーの「フラッグシップモデル」というだけの性能を実感させます。
イヤーピースの質感も高くて、フィット感も良い感じです。 S・M・L(Mサイズは初期装着)の3種類から選択できます。
| 左からS・M・Lサイズ(Mサイズが最初から装着) |
この価格帯で純粋な音質面ではかなり上位と言えるレベルで、コストパフォーマンスの高い製品です。
試聴はiPhoneおよびiPad ProからのBluetooth接続なのでコーデックはAACでの評価となります。また、イコライザーの調整はしていません。
有線モニターヘッドホンと比較
そこまで音質に凝るというのなら、有線のモニターヘッドホン(オーディオテクニカ ATH-M20x)と比べましょう。(AIFにArturia MiniFuse 2を利用)
さすがにこの比較は…と思いましたが、Air5 Pro+、強いです。
Air5 Pro+は高音域の繊細さが際立ち、音の定位もかなり正確、低音は膨らみ過ぎずに心地よくもしっかりと響きます。
もちろん、モニターヘッドホンはあらゆる音が良くも悪くも均一に正確に聞こえます。原音に近いという意味ではモニターの勝ちなのでしょうが。
音楽を楽しむという意味ではAir5 Pro+、やってくれます。J-POPでもJAZZでもオーケストラでも聞いていて楽しいです。
完璧にフラットという調整ではないわけですが、表現が難しいですが「とても上手」です。
この楽曲、歌ってこんなに引き込まれるのか、と感じさせます。単純に音が精密に再現されているとか、低域が豊かとかいう表現では足りないですね。
純粋に音楽に集中でき、楽しめる。
モニターヘッドホンの「原音はこうだよ」という勉強的な感覚から「音楽はこうやって楽しめばいいんだよ」と教えてくれるような感じですね。
最近、私自身が原音再生や録音などに凝り過ぎていたのかなぁ…と考えさせられるくらいには強いインパクトを与えるイヤホンでした。
ノイズキャンセリング性能も良い
ノイズキャンセリング(ANC)をONにした場合には、外音をしっかりとカットして、音楽などにしっかり集中できるようになります。
基本的な音質の良さに加えて、高性能なノイズキャンセリング機能も同時に利用することでの没入感はかなり凄いです。
音楽を鳴らした状態でANCをONすると、近くから話しかけられても気づきにくいレベルに周囲の音を消します。カタログスペック「-55dB」を実感する高いノイキャン性能ですね。
■ノイズキャンセリング(ANC ON)での騒音低減レベル(-55dB)の具体例
- 地下鉄の走行音:低くうなる音が大幅に抑えられ、遠くの換気音レベルに
- カフェの話し声:人の存在は感じるが、言葉の輪郭が消える
- 掃除機の音:隣室でかすかに鳴っている程度まで低減
Air5 Pro+に使われる「QCC3091」チップによって低価格でありながらも「ロスレス音質」や「高性能ANC」を実現しているようです。
搭載される「適応型アクティブノイズキャンセリング」は質の良い音源に悪影響を与えない、上手いセッティングをしていますね。
外音取り込みモードについて
本機では「ノーマルモード⇒ANCオン⇒パススルー⇒以降 繰り返し」という順番でガイダンスが入ります。(初期設定では左側イヤホンをロングタップ)
外音取り込みモード(パススルー)では、結構自然に周囲の音を聞けますが、音を鳴らさない状態では、小さな騒音も拾うようになります。
個人的にはノーマルモードで十分な気がしますが、確実に外音を聞きたいなら使っても良いモードかなという印象。
バッテリー持ちと急速充電
ちなみにイヤホン単体では6時間程度の連続再生となっていて、若干短い感がありますね。
音質重視で比較的短時間の使用を想定していると思われます。用途的にながら聞きなどで長時間使いたい場合には注意点となるポイントです。
一応10分の充電で約2時間の再生ができる急速充電に対応していて、ケース併用で最大30時間の連続再生が可能となっています。
通話性能
計6基のマイクとAIノイズキャンセリング、独自アルゴリズムを搭載し、周囲の騒音を適切に除去して自分の声だけをクリアに相手へ届けてくれるとのこと。
確かにマイク性能はかなり良くて、通話にも十分使えるので普通にうれしい機能ですね。
マルチポイント接続
2台のデバイスに同時接続が可能。スマホで音楽を聴きながら、PCでのWeb会議に即座に切り替えるなどの使い分けが可能です。
ただし、マルチポイント機能を使った場合、LDACに対応しなくなるなどのデメリットが生まれます。
また、片方で再生を止めて、もう片方の端末でスタートすると自動で切り替わるのですが、イヤホン側で端末を選んだり、一時的に接続を固定することなどはできないため、不意に切り替わってしまうパターンもあったりします。(慣れれば問題は無いです)
気になる点(デメリット)
バッテリー持ちがやや短い
高音質ドライバーと強力なANCを積んでいるため、単体での連続再生時間が競合機より短め(5〜6時間程度、設定次第でさらに短くなる可能性あり)です。
便利機能の割り切り
- ワイヤレス充電非対応
- 装着検出機能(外すと止まる機能)がない
- マルチポイントとLDACを併用すると接続が不安定になる(併用は不可と記載アリ)
これらのいくつかの便利機能は削減されています。マルチポイントとLDACは併用不可と書かれているのでしょうがないですが、装着検知などは下位モデルでも付いていたりします。
音質に全振りした上でコストを抑えるための判断という感じがしますね。
デザインの好み
ロゴ部分のゴールド(銅に近い色)のアクセントは高級感がある一方、好みが分かれるポイントです。個人的には気になりません…。
スペック表
- チップセット:Qualcomm QCC3091(S3 Sound Platform)
- ドライバー:xMEMS Cowell + 10mm ダイナミック
- 対応コーデック:LDAC / aptX Lossless / aptX Adaptive / AAC / SBC
- 次世代規格:LE Audio(LC3)対応
- ANC:最大−55dB AI適応型
- Bluetooth:5.4
- 再生時間:単体 約6.5時間 / ケース併用 約26時間
- マルチポイント:対応(2台)
- 防水:IPX5相当
専用アプリ:PeatsAudio
PeatsAudioアプリを使うことでAir5 Pro+の詳細な調整ができます。ファームウェアアップデートもアプリ経由になりますね。
-
Google Play
https://play.google.com/store/search?q=peatsaudio&c=apps&hl=ja
-
App Store
音質バランス(イコライザー)、ANC制御のパターン変更、タップ操作の動作を変更するなど、できることは結構多いです。
個人的にはタップ操作での動作変更は毎回必ず行うので必須アプリですが、初回にメールアドレスでのログインが求められるのだけがちょっと抵抗あるかもです。
まとめ
SOUNDPEATS Air5
Pro+は「技術的な新しさ・音楽的な心地よさ・日常での使いやすさ」これらを成立させた、非常に完成度の高い一台です。
メリットまとめ
- MEMSとダイナミックのハイブリッド構成による高解像度と温かいボーカルの両立
- LDACとaptX Losslessの両対応により、ハイレゾもロスレスも楽しめるスペック
- 最大−55dBの強力なANCとAI自動調整機能による静寂と圧迫感のない使い心地
- 最新チップQCC3091と次世代規格LE Audio対応による、優れた接続安定性と将来性
- 計6基のマイクとAI技術を組み合わせたクリアな通話性能
- 10分の充電で2時間使える急速充電とマルチポイント対応の利便性
- 3万円クラスの最新技術を1万円台で体験できる高いコストパフォーマンス
デメリット
- 高音質ドライバーと強力なANCを優先しており単体での連続再生時間がやや短い
- ワイヤレス充電や装着検出機能は非対応
- マルチポイント接続を有効にするとLDACでの高音質再生が利用できなくなる
- 現在のカラー展開が1色のみでデザインの選択肢が限られる
音の細部まで聴き取りつつも気軽に音楽を楽しみたい。そんな方に、ぜひ体験してほしいイヤホンでした。

製品リンク:SOUNDPEATS Air5 Pro+(Amazon)
